暮らしの石鹸「家事石鹸」

きっかけは娘のひとこと

「ママのお手て、痛いから嫌っ!」

私が家事にも手づくり石けんを使おうと思ったのは、こんな幼い娘の一言がきっかけでした。
毎日毎日、育児は生まれた時からエンドレスで洗濯・掃除・料理・食器洗いもたくさん!こまめにハンドクリームを塗る暇もなくて、気づけば私の手は乾燥と手荒れでガサガサになっていました。だから、手や頬に触れた私の手を娘が痛がるのも当然でした。家族のために頑張っているのに・・・と、その娘の一言にとても悲しくなりました。でも同時に手荒れの原因であろう市販の洗浄剤に疑問をもつきっかけを得ることが出来ました。
そして、「また元の綺麗な手になって娘の頬を撫でまわしてやろう!」と、家事にも手づくり石けんを使ってみることにしました。

顔・からだ用の石けんとの違いから

まずは顔・からだ用のマルセイユ石けんをお皿やふきん洗いに使ってみました。汚れ落ちも良く手荒れも治り始めたことはとても良かったのですが、泡立ちが悪く溶け崩れやすいのであっという間に石けんが無くなってしまいました。さらに顔・からだには嬉しいしっとりとした保湿感は、お皿やふきんには水切れの悪さとべたつきとなって現れました。一体、身体用と台所用の石けんは何が違うのだろう・・・?お皿や衣類などに最適な家事石けんを作りたい!という欲望はそれまでの私の石けん作りの視点を大きく変えて行きました。そもそも洗浄剤とは何なのか?頭では当に理解していたことをいま一度学び直してみることにしました。洗浄成分のこと・原料のこと・環境のこと・健康のこと・経済のことなど視点を変えることで、新たな気づきをたくさん得ることが出来ました。

循環する家事石けんを

石けんだけで暮らしているといかに家事に多くの石けんを消費しているかが解ります。それだけ家事に洗浄剤は欠かせないということです。たくさん使うということは、もちろんそれを作る原料も、労力も、燃料も、使ったあとの排水も、それを分解する微生物も・・・関わるすべてがたくさんたくさん必要だということです。この中で心地よい暮らしや地球の循環の妨げとなっている負の「たくさん」を減らすことができれば、石けんでの暮らしはもっと健やかで楽しく、地球ももっと心地よく環るのではないかと考えるようになりました。
「関わるすべての負の事柄にひとつひとつ目を背けずに向き合い、今私が出来る精一杯の循環する石けんを作って見よう!」いつしかそんな家事石けんづくりに向き合う日々が始まりました。

成分は3つだけ

長い試行錯誤を経て完成したのは「ココナッツ油・ラード・精油」の主要成分が3つだけのとてもシンプルな処方の家事石けんです。でもそこには今の私の精一杯のこだわりと願い、地球への感謝の想いが込められています。

1つ目のココナッツ油は、㈱ココウェルさんのプレミアムココナッツオイルです。有機認証など品質の良さはさることながら、売り上げの一部が寄付となりフィリピンの生産農家や学生の支援など地球の未来に繋がる取り組みもされているからです。石けん材料に欠かせないココナッツは日本では育たない植物です。毎日熱帯で重労働されているココナッツ農家さんへの感謝を忘れてはなりません。非常に酸化し難いココナッツ油の性質は石けんの酸化も防ぎますし、我が家では揚げ油やお菓子作り・夏のスキンケアオイルとしても欠かせない存在です。

2つ目のラードは、私たちが頂いている食用豚肉の脂です。通常私たちが頂いているのは赤身の部位であり脂身の部分の多くは産業廃棄物として棄てられています。目の前で廃棄されている命を石けんという形に変えることで最後まで感謝して頂き自然に還すことができます。それは大切な命を頂いて生かされている私たち人間の使命や責任でもあると思っています。さらには地球循環の大きな妨げとなっているパーム油の代替ともなります。
ただそうは思ってみたものの石けんにできる品質のラードが無いのが現実でした。そこで何社かの油脂製造業者に交渉しました。そして私のような小さな事業者の声を真摯に受け止めて下さった高い精製技術を備えたJAS認定油脂製造業社が、溶剤・シリコン・BHA等の有害な酸化防止剤を用いずに石けん製造に使えるレベルまで精製した食用純製ラードを作って下さることになりました。ラードは古くから日本でも医薬品としても使われ、人間の皮脂組成にも酷似した治癒や保湿に欠かせない油脂でありますし、我が家ではお料理やお菓子作り・冬のスキンケアやハンドバームとして重宝しています。

3つ目の精油は、植物の作り出す香り成分です。石けんの力を上げるためと使い手への労いのために施しています。暮らしには欠かせない家事ですが、日々同じことの繰り返しで時には億劫になることもあります。そんな気持ちを少しでも楽しく心地よく出来たなら・・・植物の香り成分には人間を元気にしたり癒したり、さらには汚れ落ちをよくしたり殺菌したり、そんな確かな力があるのです。
日本で育つ和薄荷や搾汁後の廃棄物となっている蜜柑や檸檬の果皮、そして山林の循環を整えた後の伐採材や端材の杉・檜など、そんな廃棄物から香り成分を取り出し活用することでさらなる地球の恵みの循環に繋がります。植物の放つ偉大な香り成分を薬効や使い手の心地よさも考えて、3種の家事石けんに作り上げました。

 

石けんの声を聴く

石けんは生きています。石けんになる材料はすべてもとはこの地球の生物だからです。環境を整えてあげさえすれば自ら石けんになろうとする生きる力があることを私は知っています。だから余計なことはせずただただ石けんの声を聴き、なりたいようになれるように見守り、時折そっと手を添えるだけです。時間と労力はかかりますがブレンダー等で鹸化を急がせないことで、石けんは自らの力を存分に発揮し質の良い石けんになってくれます。そんな懸命な石けんたちの姿こそが、20年以上作り続けている今も作り手である私を夢中にさせるのかもしれません。
「良い石けんになってくれてありがとう。」白くすべすべと美しく仕上がった石けんに出逢うたびに自然に感謝の言葉と笑みがこぼれます。

 

家事石けんから変わる暮らし

家事石けんを使い始めてから私の暮らしは大きく変わりました。毎日繰り返される食器洗い・洗濯・掃除が億劫だった私にとって、少量で泡立ち汚れ落ちや水切れも抜群で良い香りにしつらえたお気に入りの家事石けんを使うことが嬉しくて、毎日の「あらう家事」がぐんっと楽しい時間に変わりました。
野菜や果物をガシガシ洗ってワックス等を落としたり、シャツの襟袖口・上履・靴下もこすりつけて真っ白に、ウールやシルクもふんわり洗い上げ、換気扇・窓ガラス・床も綺麗にすっきりと。お風呂掃除やお皿洗いを手伝ってくれる子供達にも安心して任せられますし、土ものの器や子供のお弁当箱・口に運ぶお箸やお椀やふきん等に残留しやすい合成洗剤への不安もなくなりました。

役目を終えた洗浄後の排水も生物に負担をかけることなく、素材のすべてがあっという間に地球に還って行く。そんな完全な生分解性により地球の循環を妨げないことに、使い手として毎日幸せを感じます。たったひとつの家事石けんが、我が家をシンプルで心地よく健やかに循環する暮らしに変えて行きました。

 

あらう暮らしをえらぶ

すべては多様性であること。
長年講師として石けん作りを多くの方に伝えてきた今だからこそ思えるようになったことです。家事石けんを作りたい人・作れる人・作れない人、それぞれの事情や生き方があります。すべての事において選択はいつも自由であり、だから人間は幸せでいられます。
そしてこれからの私の役割は、家事石けんを使おうと思って下さる方に「あなたの暮らしに合う家事石けんをどうぞ。」と受け入れて差し伸べる、そんな多様性のある伝い手であることだと思っています。

 

家事石けん3種
・【白薄荷-しろはっか-】薄荷の香り
・【晴蜜柑-はれみかん-】柑橘の香り
・【森小径-もりこみち-】森林の香り

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品名:洗濯用・台所用石けん
成分:純石けん分(87.3%脂肪酸ナトリウム・JIS K3304検査済)
原材料:有機ココナッツ油・国産純製ラード・精油
用途:食器・衣類等の洗浄
販売価格:¥660
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【製造販売について】
石けんは成分分析機関にて成分検査を受けています。また家庭の台所ではなく設備を整えた製造所にて厳正な管理のもと製造しています。


▷お求めは
・Mauruuru fare (姫路市梅ケ谷町24-30)
・Mauruuru fare Online store

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