鈴蘭・鷺草-創香と受賞-

12月に開催されたKAORI CREATOR®フレグランスコンテスト2023にて、今年は第4位入賞を受賞いたしました。昨年に続き入賞できたことに驚きと喜びの想いを抱きながら、長島先生からの壇上での「昨年に続く快挙!」という御言葉を恐縮ながらもありがたく受け止めました。
そして今回何よりも良い経験になったのは、審査員を務めて下さった、某有名外資系ブランドの調香や多くの受賞など国内外でご活躍されている素晴らしい調香師の方に評価やアドバイスをいただけたことでした。日本と欧州での調香師のお仕事の違いや裏側、プロならではの香りの組み立て方法など調香師の世界を垣間見れる貴重なお話もお聞きすることができました。今後の創香にしっかり役立てていきたいと思います。

今年は、予選通過した「鈴蘭」と本選で入賞した「鷺草」の2種類の香りを創りました。
昨年の「白菊」に続き、白き小さき儚き花をテーマに選んだのはある想いがあるからです。

白い花を表現するのに欠かせない香りは限られていてどうしても似たような選択になりがちです。同じような香りにならないよう、且つその花らしさを失わないよう、悩ましい選択と調香の微調整を何度も繰り返しました。とくに創香までの製作時間が短かった本選用の「鷺草」は幾度も試行錯誤しました。その繊細な香りを記憶し表現するために、鷺草展に足を運び、自ら鷺草を育てて、やや香りが強まる真夜中まで起きてその香りを何度も脳に叩きこんだりしました。
受賞の際に「スパイシーノートが魅力的で印象的な香り」とご評価頂けたことに、そんな苦労が報われ大変励まされた心持になりました。

香りを創るひとときは石けんと同じです。
誰かを想う気持ちを「香り」というカタチに変えていく。私はそんなプロセスが心底好きなんだなといつも思います。
昨年の「白菊」も、今年の「鈴蘭」「鷺草」も、この世界のすべての女性たちを想いながら創香しました。己も含め、家事に育児に介護にお仕事に・・・と、あらゆることを日々こなし生きる女性たちはまるで戦士のようだと感じる時があります。でも時には、いつもの鎧を脱ぎ捨てて羽を休め女性らしさを楽しむことが必要なことも知っている賢く美しい戦士です。この清しく華のある白い花々の香りは、そんな女性たちが羽を休める束の間に纏って欲しい香りの鎧です。
「ほら、私はこんなに素敵よ、大丈夫!」と誇らしい自信と心からの笑み、しなやかな所作をも生み出しながら女性を美しく守る鎧。そんな想いで創り上げました。

以下は私の創香のコンセプトシートです。
「どんな香りだろう?」と想像しながらお読み頂けると嬉しいです。

鈴蘭
花言葉は「幸せの再来」。漸く世界が日常を取り戻し再び訪れた幸せがこれからもずっと続きますように。世界中で愛される清楚で可憐な花姿の鈴蘭は、調香の世界でも多くの名香に用いられる香りです。かの偉大な作曲家チャイコフスキーもその香りを「音楽のように、息もできないほど私を夢中にさせる香り。」と表現しました。真っ白で清らかで心満たされる幸せな鈴蘭の香りを表してみました。

鷺草
優美に空を舞う白鷺のような花を咲かせる鷺草(サギソウ)は、我が故郷の花であり、自然界から姿を消しつつある野生のランです。その可憐な花姿が皆に愛されますが、真夜中にひっそりと儚い香りを放つことはあまり知られていません。清しく透き通るような繊細さの中にしっかりと芯のある力強さも併せ持つ胸をすく鷺草の香り。この美しい植物がこの世界から消えないように祈りを込めて。

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