パーム油のこと。

今日は少しまじめなお話をします。

このコロナ禍で進んだオンライン化のお陰で、最近は隙間時間を活用して色々な講座にzoom参加しています。先週は前から見たかったドキュメンタリー映画『SEED~命の糧~』を見て色々と考えさせられました。




今日はコープ自然派さんのオンラインイベントにて植物油主にパーム油問題についてのお話を拝聴しました。“ウータン・森と生活を考える会”の石崎さんが今現在のパーム油の現状・問題点・取り組みなどを良い面も悪い面も含め、真実を丁寧に明確に伝えて下さいました。また現地ボルネオでNGO活動に取り組んでいる青年リヌスさんがLIVE中継でお話くださり、まさに今のボルネオとパーム油の現状をリアルな映像と生の声で聴けたことは本当に有意義なことでした。ネット・メディア情報や政治的な圧力のある記事ではなかなか私たち消費者は真実を知ることができません。オンライン講座への参加者は70名を超え過去最高人数とのことで、真実を知りたいと思う消費者の関心の高さが伺えます。

パーム油は日本市場の洗剤・加工食品・外食産業・化粧品等あらゆるものに使われています。そのどれにも「パーム油」の表示はなく「石鹸素地」「植物油」などと違う形で表示されており気づかないうちに大量消費しています。日本人は無意識に一人当たり年間5kg以上のパーム油を消費している消費大国です。
我が家では元よりあまり外食はしませんが、加工食品を買うときも「植物油」と表記のあるものは買わないようにしています。市販の洗浄剤はもちろん必要ないので買いませんし、化粧品も素材を選び手づくりしています。それでも無意識に取ってしまっているものは避けようがありませんが、選択肢が見えるものは極力気にかけて暮らしています。購入の際に少し意識することはそんなに難しいことではないですし、パーム油を買わなくなっても特に生活が不自由になったとは感じていません。
石けんを作る油脂も6年前からパーム油使用を止め、Lesson recipeも順次切り替えて行きました。そして今私にできることのひとつとしてボルネオの森と動物のために寄付を続けています。小さなことでも未来の地球のためにできることはたくさんあると思っています。

私が基礎講座【石けん・こと始めの會】を始めたのもパーム油やその他の油脂問題を伝える場や一緒に考えてくださるソーパーさんを募りたかった想いがあります。また、Lessonではパーム油の代わりに硬さを出す油脂としてよくラードも使用しています。ラードを使用するというと「臭い」とか「豚が可哀そう」とか「植物性の方が身体に優しい」などという少し偏見をお持ちの方もいらっしゃいますが、丁寧に根気よくお伝えするよう努めています。
臭いが出ない精製されたラードを用いたり、処方や作り方を工夫する方法をお伝えしたり、産業廃棄物として毎日大量に捨てられているラードのことを知っていただいたり、ヒトとブタの非常に近しい皮膚構造を生物学的にお話ししたり・・・良い面悪い面を正しく伝え理解した上で“あらうを手づくる”ということを今一度考え、何事も広い視野で捉えることが出来る賢く知恵のあるソーパーになって頂きたいと願ってお伝えしています。

今回のオンライン講座ではRSPO認証パーム油の解説で参加されている太陽油脂(パックスナチュロン)の社員が参加者からその現状や見解を問われる場面もありました。石鹸会社というと地球に優しいイメージですが多くの日本の石鹸企業も大量のパーム油プランテーションを開発し森を破壊しています。その理由を問われた答えは「安価で安定した供給が出来る使い勝手の良いパーム油だから使用している」という予想通りの企業目線の答えで少しがっかりしました。
確かにパーム油は他の油脂に比べ驚くほど安くビジネスとしては大きな利益に繋がります。石けん教室でもたくさん配合するレシピにすることで大きな利益に繋がります。ただ目先の利益に喜ぶのでは無く、そもそもなぜそんなにパーム油が安いのかを考えて欲しいのです。

先日、日本トップの油脂製造会社の元営業マンの方とお話しする機会がありRSPO認証パーム油の現状をお伺いしました。「現地では認証があるものも無いものも同じ工場で作っているのが現状。なんとなくラインは分かれているけどキチンと仕分けなんかしてなくてラベルだけ分けて貼っている。現地の人が工場を二つ作る余裕なんてないし、そもそもパーム農場の労働環境は何も変わっていない。」と仰っていました。日本ではオリンピック開催決定の時期から一気にRSPO認証制度に加盟する日本企業が増えました。オリンピックで世界的な視線が集中する中「No! Palm」意識の高い欧州諸国の目を気にした動きと思えてなりません。「うちはRSPO認証パーム油使用してます!」と高々と声を掲げて皆が今のような消費を続ければ、近い未来には森をすべて失いそこに住む動物達も絶滅してしまうでしょう。

今回石崎さんも仰ってましたが私個人の見解としても、RSPO認証パーム油マークがあるからたくさん使ってもよいとは思えません。RSPO認証とは持続可能なパーム油の生産と利用の促進制度のことですが、そもそもパームという植物がモノプランテーション化により地球で全く循環していません。循環しない生物はこの地球で持続していくことはできません。地球に生まれしものが地球に還ることで生態系は破壊されることなく地球が持続していくのですから。そう考えると「持続可能なパーム油の使用を促す」RSPO認証にも違和感を感じます。耳障りの良い言葉に流されパーム油の使用は減ることが無く加速を続け、どんどん森とそこに暮らす生物や地球の未来を失っています。
おうちでの石けん作りにおいてもパーム油は身近な油脂ではなくスーパーで売ってもいません。加工食品のみに使われているのも理由があるからです。石けんを作るためだけにネットで取り寄せ、食べることもできないパーム油は、石けんを手づくる暮らしの中でも循環していないことがその答えだと思います。

また、「パーム油を使わなくなれば現地の人の仕事が無くなる。」と仰るかたもいます。そこも今日しっかりお話を聞けました。ボルネオで実際にパーム油を作っているのは日本などの先進国の伐採のせいでそこに住めなくなった森の原住民や他国から連れてこられた貧しい家族労働者が多数です。パスポートを取り上げられ低賃金で熱帯気候の中、何時間も家族で重労働や強制労働させられ、学校に行けない子供たちもたくさんいます。パーム油農場で生まれ一生をパーム油農場で終える子もいます。私たちがRSPO認証パーム油を使うことで幸せに暮らしているとは到底思えません。

今こういった現状を変える取り組みとしてパーム油というモノカルチャー経済に頼らず国力を上げる活動が始まっています。NGOのリヌスさんもその活動者の一人です。失われた森を取り戻すために毎日何本も木を植えています。珈琲や果樹など30種もの在来種を育て苗や食物をお金に換えることで、原住民の食と暮らしを支え豊かにし森の命の循環を支えるアグロフォレストリー(森林農法)も実践されています。
さらに未来ある取り組みの一つとして、ボルネオのこれからを担う現地大学生への環境教育も行われており、自国の現状を正しく知ることで愛国意識を持ちパーム油農園を辞める若者も増えているそうです。一方で「いまだ毎日毎日森林破壊は行われていて、まだまだ伐採される森が10年先まで決定している。」とリヌスさんは背後に広がる森を指さしながら悲しそうに仰っていました。

そしてパーム油プランテーションが加速する中で一番の被害者はそこで暮らしていた生物です。とくに絶滅危惧種のオランウータンはすでに半減しています。“森の人”と云われるオランウータンは人間と96.7%もDNAが同じ極めて人間に近い生物ですから、やはりヒトと同じように長年子を育てて命をはぐくみます。しかし森を失いプランテーションに侵入したオランウータンは害獣として殺され、母を失った子供もまた生きていけずに死んでしまうか捕えらえれ売られてしまいます。運よくNGOに発見され保護された子も帰る森がありません。
そんな人間と友達みたいなオランウータンの命と引き換えにしてまでパーム油を使おうとはどうしてもなれないのが私の今の率直な気持ちです。いつか本当の意味で生物多様性や命の循環が戻るその日まで、私が出来ることを続けていこうと思っています。思い悩み訴えるだけでなく、今後はさらにきちんと目に見える活動にしていこうと色々な視点から前に進めています。幸せな明るい未来へ繋がるお知らせが出来るよう頑張ります。

先日NHKで放送されたドキュメンタリーが今日の深夜に放送されるそうです。
オランウータンやボルネオ環境問題に興味ある方はご覧下さいね。
【NHKスペシャル:オランウータン いのちの学校】
 NHK総合 深夜0:30~

 

近年は10月でもまだまだ育っているバジルたち。
このホーリーバジルも本来日本では育ちにくい品種なのだけど、まだまだすくすくと成長中。これも温暖化の影響かな…講座後はしみじみとそんな考え事をしながら、このホーリーバジルでガパオライスを作りました。ナンプラーの香りが食欲をそそります。



今頃、娘もガパオ弁当食べてるかな♪




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